未成艦の特徴

伊吹は改鈴谷型重巡として戦時急増計画の中に盛り込まれたが、ミッドウェイ海戦における大敗北の結果、空母急増計画が最優先されることとなり、とりあえず船台を明け渡さなければならなかったので、進水できるところまで工事をしてその後の活用が検討された。重巡の船体であるので、空母にするには大鯨や剣崎、高崎と同じかやや小振りだったので、高速給油艦に改造する案も浮上した。しかし、最終的には空母への改造が決定され、佐世保海軍工廠で改造工事が始まった。
ところが、伊吹の建造には致命的な問題があった。機関を他の雲竜型空母に優先したために伊吹には本来必要であった152,000馬力が72,000馬力の機関しか設置されなくなり、速力が計画の35knから29knへ大幅に低下することだった。空母の速力と飛行甲板の大きさは密接な関係があり、速力が少々遅くても十分な長さの飛行甲板があればなんとかなるが、伊吹はその長い飛行甲板さえ確保するのが困難な状況であった。そこで、可能な限り飛行甲板を延長することが試みられ、結局日本の航空母艦の中で唯一船体より長い飛行甲板を持つ空母となった。
さすがに対空兵装は大きさの割りに充実しており、高角砲は阿賀野型軽巡に搭載された九八式8cm高角砲を採用し、25mm3連装機銃も16基配備された。残存航空母艦に次々と装備された12cm30連装噴進砲も両舷に各2基装備された。さらに、対空用の13号電探、21号電探を配置する予定だった。

笠置、阿蘇、生駒の3艦は、雲竜型空母の建造計画で建造されていたものである。雲竜型は雲龍、天城、葛城の3艦が完成したものの、搭載すべき艦載機はなく、機動部隊が激突する戦局ではすでになかった。笠置は進水後佐世保海軍工廠へ回航されて艤装が開始されたが、84%進捗した段階の昭和20年4月に一切の工事が中止された。阿蘇は呉海軍工廠で昭和19年11月に進水後、生駒は川崎重工業神戸造船所で昭和19年11月に進水後、それ以後の工事は全て中止された。
未成艦のスペック
諸元 | 伊吹 | 笠置 | 阿蘇 | 生駒 |
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基準排水量(英トン) | 12,500 | 17,150 | 17,150 | 17,150 |
公試排水量(メートルトン) | 14,800 | 20,400 | 20,200 | 20,450 |
水線長(m) | 198.35 | 223.00 | 223.00 | 223.00 |
最大幅(m) | 21.2 | 22.0 | 22.0 | 22.0 |
飛行甲板(長さ×幅、m) | 205.0×23.0 | 216.9×27.0 | 216.9×27.0 | 216.9×27.0 |
出力(馬力) | 72,000 | 152,000 | 152,000 | 152,000 |
速力(kn) | 29.0 | 34.0 | 34.0 | 34.0 |
航続距離(kn-海浬) | 18-6,300 | 18-8,000 | 18-8,000 | 18-8,000 |
備砲 | 7.6cm連高×2、25mm3連×17 | 12.7cm連高×6、25mm3連×13 | 12.7cm連高×6、25mm3連×13 | 12.7cm連高×6、25mm3連×13 |
搭載機数 | 27 | 57+8 | 57+8 | 51+2 |
昇降機数 | 2 | 2 | 2 | 2 |
沈没 | ~22.8/解体処分 | ~22.11/解体処分 | ~22.4/解体処分 | ~22.4/解体処分 |