赤城、加賀の特徴

赤城、加賀ともにワシントン条約によって誕生した、いわば条約型航空母艦である。戦艦の対米英比率を6割に抑えられた日本は建造中の戦艦や巡洋戦艦をあきらめなければならない状況になり、そのうちの2隻を空母に改造することが決まった。当初、巡洋戦艦の赤城と天城が空母へ改造される予定だったが、関東大震災が起こって天城が船台上で破壊されてしまい、廃棄処分が決まっていた加賀を急遽空母に改造することとなった。
巡洋戦艦赤城のスペックは常備排水量41,200トン、40cm砲10門、出力131,200馬力の機関を備えて30knの高速を出すはずだった。一方、加賀は常備排水量39,900トン、40cm砲10門、速力26.5knの性能で赤城とともに長門型戦艦を上回る大きさと性能であった。この2艦はワシントン条約の空母を制限する項目で単艦の排水量は上限27,000トンであるが2隻に限っては33,000トンまで認めるという条項を利用して建造されたものである。
竣工時の赤城、加賀で一番目を引くのは何と言っても三段式甲板であろう。一番下の甲板は艦攻や艦爆など重量の重たい艦載機の発艦甲板、二段目は偵察機や戦闘機など比較的軽量な飛行機の発艦甲板として使用し、最上甲板は状況に応じてどの機体でも発艦できるようにし、広い後部は着艦用に使い分けようとした。発艦と着艦が同時に行え、反復攻撃有利であると考えられた。飛行機の発達により二段目甲板の長さ不足は決定的で、長い全通甲板へ改装される。
空母で最大の問題は煙突である。空母は高速を出すため、機関出力が大きくそれだけ熱くて多量の煙を排出する。この熱煙は艦載機の着艦に大きな影響を与え、最悪の場合気流の激しい乱れによって着艦できないことがある。いかに排煙を効率よく着艦に影響のでない場所に設置するかが、設計者の頭を悩ませた。赤城の煙突は大小2本あり、小煙突は舷側に直立しているが、大煙突は下方へ大きく湾曲して排煙を海面に向かって排出する形にした。煙突の基部にくみ上げた海水を放水し、煤煙を海水に溶けこませたうえ、熱煙の温度を下げて無色のガスにして排出できるようにした。
赤城は煙突の問題を何とかクリアしたが、赤城の方式での結果が出ていなかったため、加賀はイギリスのアーガスを参考にして、煙突を両舷に振り分け、飛行甲板の下を這わせて艦尾まで導き、斜め外側に向けて開口した。ところが、この方式は大失敗だった。加賀は速力が27.5knと遅かったので艦尾から出た煙は後方へはたなびかず、逆流して着艦できない状況に陥った。この誘導煙路は内側にあった准士官室を40度以上にして居住できない弊害も生んでしまったので、後に赤城と同じ方式がとられる。
赤城、加賀の大改装
加賀は赤城より後に完成したが、赤城より不具合の箇所が多く先に大改装することになった。加賀、赤城とも小規模の改装はしてきたが根本的に改善しなければならない箇所が多く、その要求は次の通りであった。
生まれ変わった加賀

- 搭載機数の増加
- 飛行甲板を一層とし、最大限に延長すること
- 速力の増加
- 湾曲型煙突の採用
- 塔型艦橋を増設してアイランド・タイプとすること
- 航続距離の増大
- 12.7cm連装高角砲8基16門とし、反対舷に対しても仰角30度以上の有効射撃ができること
新型空母を1隻建造するくらいの大改装で、約2年間佐世保工廠のドックで工事を受けた後、第二艦隊第二航空戦隊に編入された。
赤城の大改装
加賀が現役復帰したのと入れ替わりに赤城が佐世保工廠にドック入りした。赤城の改装項目は加賀とほぼ同じであるが、艦橋は加賀が右舷前方に設置したのに対し、赤城は左舷中央やや前方のレイアウトとなった。これは、着艦のときに飛行甲板中央から前方を使用するので、前に艦橋などの構造物があると不安感を与えるのでできるだけ後ろのほうがよいとの意見が出たため、右舷は煙突があるので左舷に艦橋を設置したということである。この左舷艦橋は赤城と飛龍のみで他のアイランド・タイプの艦は右舷艦橋である。
赤城の大改装は昭和13年8月31日に終了し、同年12月15日に第一艦隊第一航空戦隊に編入された。
赤城、加賀のスペック
諸元 | 赤城 | 加賀 | ||
---|---|---|---|---|
新造時 | 改装後 | 新造時 | 改装後 | |
基準排水量(英トン) | 26,900 | 36,500 | 26,900 | 38,200 |
公試排水量(メートルトン) | 34,364 | 41,300 | 33,693 | 42,500 |
水線長(m) | 249.00 | 250.36 | 230.00 | 240.30 |
最大幅(m) | 29.00 | 31.32 | 29.60 | 32.50 |
飛行甲板(長さ×幅、m) | 190.2×30.5 | 249.2×30.5 | 171.2×30.5 | 248.6×30.5 |
出力(馬力) | 131,200 | 131,200 | 91,000 | 125,000 |
速力(kn) | 31.0 | 31.2 | 27.5 | 28.3 |
航続距離(kn-海浬) | 14-8,000 | 16-8,200 | 14-8,000 | 16-10,000 |
備砲 | 20cm単×6、連×2、12cm連高×6 | 20cm単×10、12cm連高×6、25mm連×14 | 20cm単×6、連×2、12cm連高×6 | 20cm単×10、12cm連高×8、25mm連×11 |
搭載機数 | 60 | 66+25 | 60 | 72+18 |
昇降機数 | 2 | 3 | 2 | 3 |
沈没 | 17.6.6/ミッドウェイ沖/雷撃処分 | 17.6.5/ミッドウェイ沖/航空機 |