高雄型の特徴

高雄型は妙高型を基本として改良を加えたもので、一番の特徴は4隻ともに平時の艦隊旗艦施設を装備していることである。設計段階ではワシントン軍縮条約下だったので戦艦の建造が制限され、巡洋艦への期待が高まっていた。そこで少ない戦艦に代えて重巡戦隊を艦隊主力に据える腹づもりがあったのであろう。
艦隊旗艦とは艦隊司令長官の乗る艦である。長官を始め副官、参謀長、各科参謀、司令部通信班、その他軍楽隊や部付要員など、およそ100名が乗り込んでくる。したがって、司令部通信設備や作戦室、司令部要員の居住室などが必要となってくる。それらを収納するために必然的に艦橋が巨大化した。あまりに大きいので、実大模型を作って極力小型化に努めたが、最終型は見ての通り妙高型と比べて一回りも二回りも大きなものとなってしまった。
妙高型との違いは次の通りである。
- 魚雷兵装の改善
- 妙高型では無理矢理装備した魚雷発射管であったが、高雄型では最初から装備した。妙高型では中甲板に発射管を設置したが、もし魚雷が誘爆したときのことを考えると、致命傷になる可能性がある。そこで高雄型では上甲板設置とし、発射の際旋回すると発射管先端が舷側から飛び出すくらい舷側に設置された。この装備法は魚雷本体の強度が高まり、上甲板からの発射にも耐えうるようになったことが大きな要因である。
- 弾火薬庫の防御強化
- 前部砲塔群および後部砲塔群の下にある弾火薬庫の舷側を妙高型より1インチ厚い5インチ甲鈑とした。当時、1万トン級重巡では最も厚い装甲だったが、基準排水量は妙高型と同じ1万トンである。そのからくりは、1番砲塔から5番砲塔までの距離を1m縮めた結果、バイタルパートの防御が浮いた分を弾火薬庫の防御にまわせたのである。
- 主砲仰角の向上
- 主砲を対水上、対空兼用の両用砲とするために、仰角を70度とした。しかし、高角砲ほどの発射速度がないため現実的でなかった。したがって、摩耶には従来通りの仰角55度の砲塔が搭載されている。
- 艦橋の巨大化
- 前述したとおり、艦隊旗艦設備の収納により妙高型に比べて格段に大型化した。
高雄型の改装
友鶴事件以後、トップヘビィが問題視され多くの艦艇が改修工事を受けたが、高雄型に関しては艦橋の小型化が着手され、羅針艦橋と測的所甲板を重点的に小型化した。兵装の改装は無条約下の昭和13年から翌年にかけて高雄と愛宕が改修に入り、昭和16年から鳥海と摩耶が改修される予定だったが、開戦となり高雄、愛宕のような改装はできないまま戦地へ赴くこととなった。
高雄、愛宕の改装概要
- 水雷兵装の強化
- 発射管を4連装4基の16門に倍増した。
- 対空兵装の強化
- 12cm単装4門だった高角砲を12.7cm連装4基8門に強化した。機銃は40mm単装2門を25mm連装6基12門、25mm3連装2基6門の合計18門と換装した。
鳥海、摩耶の改装概要
改装予定前に開戦となったため、対空機銃を40mm連装機銃2基から13mm4連装機銃2基に換装しただけで出陣している。その後摩耶は昭和18年11月にラバウルで爆撃を受け大破したため修理と共に改装工事を受けた。鳥海は開戦以来大きな損傷を受けずに済んだため、サマール島沖海戦で沈没するまで改装の機会に恵まれなかった。以下は摩耶の防空巡洋艦への改装内容である。
- 主砲
- 3番砲塔撤去したため、10門から8門となる。(撤去跡に高角砲を設置)
- 高角砲
- 12cm単装高角砲を12.7cm連装高角砲に換装し両舷に3基ずつ設置する。
- 機銃
- 25mm3連装機銃を13基39門、単装9門、13mm単装機銃36門の合計84門を装備する。
- レーダー
- 艦橋上部に二一号電探、艦橋両舷に二二号電探、それに一三号電探が1基ずつ装備された。
高雄型のスペック
諸元 | 高雄 | 愛宕 | 鳥海 | 摩耶 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
竣工時 | 最終 大改装 | 竣工時 | 最終 大改装 | 竣工時 | 竣工時 | 最終 大改装 | ||
基準排水量 英トン | 10,000 | 13,400 | 10,000 | 13,550 | 10,000 | 10,000 | 13,350 | |
公試排水量 メートルトン | 12,986 | 14,838 | 12,986 | 15,152 | 12,986 | 12,986 | 15,159 | |
全長m | 203.76 | 203.76 | 203.76 | 203.76 | 203.76 | 203.76 | 203.76 | |
最大幅m | 19.0 | 20.73 | 19.0 | 20.73 | 19.0 | 19.0 | 20.72 | |
馬力 | 130,000 | 133,100 | 130,000 | 133,100 | 130,000 | 130,000 | ||
速力kn | 35.5 | 34.25 | 35.5 | 34.25 | 35.5 | 35.5 | 34.25 | |
備砲 | 主砲 | 20.3×10 | 20.3×10 | 20.3×10 | 20.3×10 | 20.3×10 | 20.3×10 | 20.3×8 |
高角砲 | 12×4 | 12.7×8 | 12×4 | 12.7×8 | 12×4 | 12×4 | 12.7×12 | |
発射管 | 8 | 16 | 8 | 16 | 8 | 8 | 16 | |
航空機 カタパルト | 水偵×3 カタパルト×2 | 水偵×3 カタパルト×2 | 水偵×3 カタパルト×2 | 水偵×3 カタパルト×2 | 水偵×3 カタパルト×2 | 水偵×3 カタパルト×2 | 水偵×2 カタパルト×2 | |
沈没 | 20.10.29 マラッカ海峡 海没処分 | 19.10.23 パラワン水道 潜水艦 | 19.10.25 サマール沖 航空機 | 19.10.23 レイテ沖 潜水艦 |