一等丁型駆逐艦の特徴

竹

昭和17年後半、ソロモン諸島方面で駆逐艦が多数沈められた。甲型の陽炎型や夕雲型の竣工が遅れていた時期だけに小型、低性能でもよいから早く前線に駆逐艦を、との声に応えて建造されたのが丁型駆逐艦の松型と橘型である。

駆逐艦が先陣を切って敵艦隊へ魚雷攻撃をしかける場面は既に消滅していたので、対空、対潜に主眼を置いた武装で良かったはずなのに、なぜか魚雷発射管(4連装1基)を装備している。船団護衛中に巡洋艦部隊に遭遇したら12.7cm高角砲では歯が立たないので発射管が必要だ、と要求があったのかなかったのか知らないが、61cm4連装発射管1基を装備している。しかし、予備魚雷もなくたった4本で巡洋艦や駆逐艦に対抗できると思っていたのだろうか。

備砲が高角砲というのも特徴である。他の駆逐艦(秋月型を除く)が装備していた12.7cm砲とは違い、戦艦大和や空母瑞鶴、重巡最上型に装備された40口径八九式12.7cm高角砲を、前部単装、後部連装の3門搭載した。対空機銃も竣工時から充実していて、25mm3連装4基、単装8基合計20門装備されていた。

目立たないが他の艦とはひと味違う機関レイアウトになっている。通常はボイラー室に罐を前部に集めその後ろにタービン室が配置されるが、この丁型は左右のスクリューシャフトに対してそれぞれボイラーとタービンを割り振った形(シフト・エンジン・システム)になっている。スクリューシャフトの角度を変えて作らないといけないので手間が掛かるが、被雷したときのことを考えると1つの罐室が浸水してももうひとつでスクリューを回すことができる利点がある。

一等丁型駆逐艦の同型艦

ネームシップ同型艦(艦名が( )は未成艦)
松、竹、梅、桃、桑、桐、杉、槇、樅、樫、榧、楢、桜、柳、椿、檜、楓、欅
柿、樺、橘、蔦、萩、菫、楠、初桜、楡、梨、椎、榎、雄竹、初梅、(八重桜)、(矢竹)、(葛)、(桂)、(若桜)、(梓)、(栃)、(菱)、(榊)

一等丁型駆逐艦のスペック

諸元松型橘型
基準排水量(英トン)1,2621,289
公試排水量(メートルトン)1,5301,580
水線長(m)98.0098.00
最大幅(m)9.359.35
出力(馬力)19,00019,000
速力(kn)27.827.8
備砲12.7cm連装×1、単装×112.7cm連装×1、単装×1
発射管61cm4連装×161cm4連装×1

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