性能諸元

艦艇のスペック(性能諸元)には先ず大きさを表す数字がある。長さ、重さが基本としてあり、特殊なあるいは特化した艦艇では特別な数字が用いられる。次に性能を示す数字がある。一般的には速度と航続距離である。そして、戦闘艦であるから兵装たる数字がある。ここでは、兵装に関する数字を除いて説明する。

長さ

各部名称

長さが表記されるのは、基本的には全長、全幅である。艦艇の種類で全長と全幅の比率をみてみるとおもしろい。

艦種全長m全幅m全長÷全幅
戦艦金剛214.5828.047.653
大和263.0038.906.761
重巡妙高201.62518.99910.612
利根198.0019.4010.206
軽巡阿賀野174.515.211.480
大淀192.016.611.566
駆逐艦陽炎118.510.810.972
島風120.511.210.759
航空母艦翔鶴257.526.09.904
大鳳260.627.79.408

同じ排水量でより高速の船を設計するとしたら、波の抵抗を減らすために正面から見た投影面積を小さく、つまり細長く造らなければならない。戦艦はある程度速度を犠牲にしているので他の艦艇に比べると幅広だが、重巡、軽巡、空母は速力を要求されるので細長く造られているのがわかる。さらに艦種によって細長比がほぼ同じ数字となっているのは面白い。

航空母艦で重要な長さの数字は、飛行甲板の大きさを表すものである。例えば、翔鶴は船体の全長257.5m、全幅26mに対して飛行甲板の全長242.2m、最大幅29.0mとなっている。船体幅より大きく左右に飛行甲板が張り出しているのが分かる。他にはあまり数字として出てこないのが水面から飛行甲板までの高さがある。魚雷や800kg爆弾を搭載した攻撃機は飛行甲板を離れた後機体が大きく沈み込むので低く造るととができない。艦の復元力と格納庫の高さとの兼ね合いが難しい。

重さ

艦艇の重さを表すには排水量を用いる。船が浮かんだときに押しのけられる水の容積(重さ)で表すのが排水量だが、戦闘艦でよく用いられる排水量には次の3種類がある。

基準排水量
ワシントン海軍軍縮条約において採用された、満載排水量から燃料および水の重量を差し引いた状態の排水量の事を基準排水量という。仮想敵国から想定される作戦海域は各国で異なり、燃料および予備缶水を含めると長大な航続力を必要としない国が有利になることから、純粋な戦闘能力のみで比較するためにこれらの重量を差し引いた状態とされた。船の状態としては不自然に過ぎ実用的ではないため、近年ではこの状態を諸元として使用する国はない。
常備排水量
ワシントン条約締結以前は、この常備排水量を排水量の標準として使用する国が多く、弾薬3/4、燃料1/4、水1/2を搭載した状態であり、軍艦が戦闘状態に入っていると想定した排水量である。
公試排水量
公試、即ち性能テストの際に使用される排水量のことで、大日本帝国海軍では弾薬を満載、燃料と水を2/3搭載した状態とし、昭和以降にはこれを重視した。往路・戦闘・復路で燃料などの消耗物資を1/3ずつ消費するとし、まさに戦闘に臨む直前、往路分の消耗物資が減り戦闘開始前であるため弾薬類は一切消費していない状態を想定したものである。

現代の各国海軍は乗組員・弾薬・燃料・水など、計画上搭載できるもの全てを搭載した状態での満載排水量を使用している。

速度

船の速さはノット(記号はkn、kt、漢字では節)で表される。これは1時間に1海里(ノーティカルマイル)進むことを意味している。1海里は国際海里で1,852mであるので、1ノットは毎時1.852kmということになる。1海里は緯度1分に相当する平均的な子午線弧長に等しいことから、海図上では非常に分かりやすい単位となる。日本海軍では艦艇だけでなく航空機の速度表示もノットを用いていた。

航続距離

航続距離から大まかな戦闘行動半径がわかる。速度は巡航(経済)速度でばかり走るわけではなく、燃料を多く消費する戦闘速度で走る場合も当然ある。艦艇の航続距離表示は、19ノットで4,000海里という形がとられている。その艦に搭載しているボイラーの特定速度における燃料消費量が分かっているので燃料搭載量から航続距離は算出できる。

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